2010年芝居月(むっつめ)上演作品
原作 : バーナード・スレイド 翻訳:青井陽治 演出 : 都本千
がざびぃ芝居月も、今年で6年目を迎えます。
2010年は 「かなわぬ想い」をテーマに、4つの劇団が上演いたしました。
日時:2010年7月8日 (木)〜7月11日(日)
一度きりだったはず。けれどこの恋、捨てられない。
「こうやって強く強く抱き合っていましょう。朝が来るまで」
ふとしたことから、恋に墜ちてしまったジョージとドリス。
でも、二人はそれぞれ、妻や夫、そして子どもたちを愛しているのです。
世界で何千回も上演された、バーナード・スレイドのラブ・コメディ。
恋する二人は昔も今も、可笑しくて、せつなくて、愛おしい。
不倫のお芝居です。しかもなんと25年に渡る長き不倫。
この二人、それぞれ幸せな家庭を持ちながら、ずるずる密会を続けてしまうイケナイ関係です。
個人的には許せない。ありえない。あ、いえいえ、自分がそうなったらではなくて、
もしパートナーにそんな相手がいやがったら、ですけど (笑) 。
ありきたりだとすぐドロドロ、グズグズな展開になりそうでしょう?なのに二人の逢瀬はいつも暖かく、
おかしくてほろ苦い。年に一度の密会を続けながら歳月は流れていきます。
登場するのも二人だけ。けれど舞台の上にはそれぞれの家族が、パートナーや子供たちの
成長する姿までが見えてくるようです。
家族を愛しているから。ここら辺りも矛盾してるんだ。でも二人の関係はやさしく、せつなくて、愛おしい。
戯曲を読んだのは20年も前でした。本当のことをいうと、最初はそれほど感心しなかった。
まあ俗にいうウェルメイドかな、なんて。
でも気にはなっていて、ときおり読み返すたびにドリスとジョージが可愛く思えてくる。
いいじゃないか、こういう「嘘」もありじゃないかなあって。
そうなんです。こっちが歳をとったんです。ようやくこの本の「嘘」の良さがわかるようになってきた。
ううむ、私も成長したもんだ。
そう、ここには魔法使いもドラゴンも登場しません。でも、これはファンタジーなのです。
空飛ぶ箒も秘密の宝物もない。正義の味方も悪人もでてはこない。
けれどこんなところに「大人」の居場所があるのかもしれませんね。
撮影:佐々木崇澄