熱海殺人事件—哀愁のトワエモア ガザビ プロデュース公演 Vol.6

日時:2008年12月4日 (木)〜12月10日(日)


そこまでして人の手柄、横取りしたいんですか
犯人の手柄は、刑事の手柄よ

お前、現場素通りしてきただけじゃないのか
ちゃんと殺したったら

舞台を切り裂くピアノ
氾濫する旋律

「海が見たい」
大山金太郎は果たして十三階段の向こうに海を見たか

男二人の「熱海殺人事件」
哀愁のトワ・エ・モア

 

ガザビvol.6「熱海殺人事件」に寄せて —— 都本 千(公演パンフレットより)

はじめて、「熱海殺人事件」を観たのは、昭和50年、池袋のシアターグリーンで上演された劇団「暫」の公演でした。
前後して、つかさん自身が事務所をたちあげたように記憶します。そして、上げ潮というのでしょう。
あれよあれよというまに、ひとつの才能が世に出ていくのを、目の当たりにしました。
それ以前の仮面舞台や早稲田小劇場時代の「つか芝居」を観ていないのは残念ですが、初期の作品をナマで知っているというだけで、

若い世代に偉そうにできるのは、ちょっとうれしい。

ちょうどその当時、作家の栗本薫が、中島梓名義の評論で群像の新人賞を受賞しており、論の重要なファクターとして、

つか作品を取り上げていました。

ところが、選考に当たった埴谷雄高ら当時の高名な文学者連が、実は誰一人「つかこうへい」の名を 知らなかったらしいというのも、

裏で話題になっていました。時代の変わり目だったのかもしれません。

あれから30余年、つかこうへいの方法論が、多くの後輩たちに影響を及ぼしているのは言うまでもありません。
またその間、名作「熱海」が様々に姿を変え、様々な劇団が上演しているのも知っていましたが、まさか、自分が演出するとは考えても

いませんでした。僥倖というのでしょう。

ともかくも、最初に感じた私自身の新鮮な驚きを、素直に直截に再現できたらいいなあ。そんな風に思っています。
もっとも自分の感性に「素直に、直裁に」というのが、実はいちばん難しいのかもしれません。

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