日時:2006年10月19日(木)〜5月22日(日)
三人の兵士
夜ではないと気がついたときに、 夜明けははじまるものらしい。
ナベテコノヨハコトモナク、オオムネニヘイワ。
一人めの兵士は海にとびこみ、 二人めの兵士は便箋をとりだし、 三人めの兵士は森にわけいった。
沖に向って水をかき、 想いを紙に記し、 薔薇の枝を折った。
そこに何か待っているから、 書き残すことがあるから、 捧げる誰かがいるから、
彼は泳ぐのだろうし、 ペンはあるのだろう。 きっと花は咲くのだろう。
やがて兵士は波にのまれ、 手紙はあてどなく捨てられた。 そして指は血に染まる。
海は泳ぐためにあったのか。 想いは綴るためにあったのか。 薔薇は手折るためにあったのか。
ナベテコノヨハコトモナク、 オオムネニヘイワ。
夜ではないと気づいたからといって、 夜明けがはじまるものでもない。